【2025年度(令和7年度)】人材確保等支援助成金 雇用管理制度・雇用環境整備助成コースについて

人材確保等支援助成金は、働き手の確保・定着を促進するため、事業主が「魅力ある職場づくり」に取り組む際の費用を国が助成する制度です。
令和7年度は合計で7つのコースがございます。

今回はそのうちの1つである「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」について解説します。

人材確保等支援助成金の雇用管理制度・雇用環境整備助成コースとは

人材の確保・定着を促進するために、事業主が行う雇用管理制度の整備や業務負担軽減機器等の導入を助成するものです。

「賃金規定制度」「諸手当等制度」「人事評価制度」「職場活性化制度」「健康づくり制度」などの雇用管理制度の整備や、従業員の直接的な作業負担を軽減する機器・設備(業務負担軽減機器等)の導入が対象となります。

助成額

助成額は取組内容によって様々ですが、雇用管理制度の取組の場合は最大で100万円、業務負担軽減等の機器の場合は最大187.5万円(対象経費の62.5%)の助成を受けることができます。
出典:雇用管理制度・雇用環境整備助成コースの詳細はこちら(厚生労働省)
(※1)上限額は、複数の雇用管理制度又は業務負担軽減機器等を導入した際の助成上限
(※2)括弧内の金額は、賃金要件(※3)を満たした場合の支給額
(※3)賃金要件とは雇用管理制度または雇用環境整備の措置の実施と併せて、対象労働者(雇用保険被保険者)の毎月決まって支払われる賃金を5%以上引き上げること
(※4)職場活性化制度は、メンター制度、従業員調査又は1on1ミーティングのいずれかの施策を新たに導入した場合に助成されるが、当該施策の導入数に関わらず一律で20万円(25万円)を助成
(※5)対象経費とは、機器・設備等の購入費用(購入価格)の他、設定費用、社員等に対する研修費用、機器・設備等の設置・撤去等の費用、リース契約およびライセンス契約等に係る費用を含む

支給までの流れ

①「雇用管理制度等整備計画」を作成・提出

  • 「雇用管理制度等整備計画」には、計画期間、導入する制度の概要、対象労働者、計画時離職率などを記載
  • その他必要書類を添付する
  • 計画期間は原則3か月以上1年以内で設定
  • 計画開始日(雇用管理制度または業務負担軽減機器等を最初に導入する月の初日)からさかのぼって、6か月前から1か月前の日までに提出
  • 計画提出時点で対象労働者が一人もいない場合、計画は提出できない

②認定を受けた計画に基づいて雇用管理制度または業務負担軽減機器等の導入

  • 雇用管理制度を導入する場合は、労働協約または就業規則への明文化
  • 業務負担軽減機器等を導入する場合は、当該機器等を納入する

③導入した雇用管理制度または業務負担軽減機器等を計画どおりに実施・利用

  • 「賃金規定制度」「諸手当等制度」「人事評価制度」の場合、制度に基づく賃金を支払う
  • 「職場活性化制度」の場合、制度に基づいて面談や従業員調査を行う
  • 「健康づくり制度」の場合、制度に基づいて人間ドックを受診する

④支給申請

  • 支給申請書には、導入した制度の概要、対象労働者、評価時離職率などを記載
  • 制度を明示した労働協約や就業規則、対象労働者の労働条件通知書・賃金台帳の写しなどの添付が必要(導入した制度により、添付書類は異なります)
  • 評価時離職率算定期間(計画期間終了後12か月間)終了後2か月以内に提出

⑤助成金の支給

  • 都道府県労働局による審査で支給決定となれば、助成金が支給される

支給までの流れ図

出典:雇用管理制度・雇用環境整備助成コースの詳細はこちら(厚生労働省)

支給要件

  1. 雇用保険の適用事業の事業主であること。
  2. 「雇用管理制度等整備計画」を提出し、認定を受けること。
  3. 計画の認定申請日から計画期間の末日まで、同一の労働者を最低1名は継続して雇用していること。
  4. 認定された計画に基づき、雇用管理制度または業務負担軽減機器等を新たに導入し、対象労働者の2分の1以上に対して、当該制度・機器を実施・利用していること。
  5. 導入した雇用管理制度および業務負担軽減機器等を評価時離職率算定期間の末日まで運用または使用していること。
  6. 「雇用管理責任者」を選任し、労働者に周知していること。
  7. 離職者がいる場合、計画開始日の前日から起算して6か月前の日から支給申請書の提出日までの間に、「特定受給資格者」となる離職理由(離職区分1Aまたは3A)による離職者の数が、計画提出日における雇用保険被保険者数の6%を超えていないこと。ただし、特定受給資格者が3人以下の場合は除く。
  8. 計画開始日の前日から起算して6か月前から計画期間の末日までの間に、雇用保険被保険者を事業主都合で解雇等していないこと。なお、「短期雇用特例被保険者」と「日雇労働被保険者」は除く。
  9. 離職率の低下目標を達成すること。

離職率の低下目標

雇用保険一般被保険者が1~9人の場合は現状維持、10人以上の場合は1%ポイント以下とすることが目標となります。
出典:雇用管理制度・雇用環境整備助成コースの詳細はこちら(厚生労働省)

 

離職率は以下の計算式で算出します。
出典:雇用管理制度・雇用環境整備助成コースの詳細はこちら(厚生労働省)

「雇用保険一般被保険者」は、「高年齢被保険者」、「短期雇用特例被保険者」および「日雇労働被保険者」以外の一般被保険者です。

「所定の期間」は、算出する離職率によって下記のとおりです。
計画時離職率の場合
…雇用管理制度等整備計画の認定申請日の12か月前の属する月の初日から、認定申請日の属する月の前月末までの期間。
評価時離職率の場合
…雇用管理制度等整備計画の末日の翌日から起算して12か月経過する日までの期間。

例えば、雇用保険一般被保険者が15人の場合、
計画時離職率が10.0%なら、評価時離職率は9.0%以下とすることが必要です。
計画時離職率が0.8%なら、評価時離職率は0.0%とすることが必要です。

なお、評価時離職率が30%以下となっている必要があります。
離職率は、同一の事業主が設置するすべての雇用保険適用事業所を対象として算出します。

支給対象となる雇用管理制度・業務負担軽減機器等の要件

A-a 賃金規定制度

賃金規定と賃金表の新設、もしくは賃金表が未整備の場合が対象となります。
「賃金規定」とは、賃金の計算方法や支払方法等を定めた規定のこと、
「賃金表」とは、雇用形態、年齢、役職、職種および資格などに対応して整理された表のことをいいます。

年齢、勤続年数、能力などと連動して賃金が上昇するものであって、定期昇給の仕組みが導入されている必要があります。

なお、賃金規定制度は、中小企業事業主のみが対象です。

A-b 諸手当等制度

諸手当制度、退職金制度、賞与制度を導入する場合に対象となります。

ただし、制度導入に伴う基本給の減額など制度導入後の賃金が低下していない必要があります。

諸手当は、役職手当(管理職手当)、資格手当、住居手当、転居手当(異動手当)、家族手当(子女教育手当は含むが、配偶者手当は除く)、単身赴任手当、海外赴任手当、地域手当、出張手当、その他労働者の諸手当制度として適当であると認められるものが対象となります。

A-c 人事評価制度

労働者の生産性向上に資する人事評価制度を導入する場合に対象となります。

評価の基準は、年齢や勤続年数のみで決定されるものではなく、能力・技能・資格、行動・姿勢、成果・業績など、労働者個人の意思によって向上させることが可能な項目を設定します。人事評価は年1回以上行い、評価の結果が評価対象労働者の賃金(諸手当・賞与を含む)に反映されるものである必要があります。

A-d 職場活性化制度

以下のいずれかの制度が対象となります。

メンター制度

対象労働者のキャリア形成上の課題および職場における問題の解決を支援するためのメンタリングの措置であって、メンター(指導・相談役となる先輩社員。外部メンターを除く)がメンティ(後輩社員)をサポートするものをいいます。

メンターに対し、民間団体等が実施するメンター研修・養成講座等、メンタリングの知識、スキル習得のための講習を受講させることが必要です。

メンターおよびメンティに対し、事前説明を行います。

従業員調査(エンゲージメントサーベイ)

事業主が対象労働者のエンゲージメント(仕事にやりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得ている状態や、所属組織への貢献意欲を指すもの)を測定する調査をいいます。

外部機関や専門家の助言・指導のもと、従業員調査(エンゲージメントサーベイ)を導入・実施し、調査結果を分析して職場環境の改善策の検討し、適用対象労働者へ説明することが要件となります。

1on1ミーティング制度

部下の成長と成果を支援するために、その直属の上司と部下が1対1で行う対話方式の面談をいいます。

1on1ミーティングを実施する上司に対してコーチングのスキルを習得のための講習を受講させ、原則として対面方式で月1回以上1on1ミーティングを実施するなどが要件となります。

A-e 健康づくり制度

事業主が労働者の健康状態を把握して、個々の状態に応じた必要な配慮を行うことを目的として、希望する対象労働者に対して、いわゆる「人間ドック」を受診させる制度をいいます。受診等に要する費用は、半額以上を事業主が負担する制度である必要があります。

B 業務負担軽減機器等

「従業員の直接的な作業負担を軽減する機器・設備など」を新たに導入し、運用すること。

不快感の軽減や快適化を目的としたもの(空調機の導入など)、業務負担軽減に資する特種用途自動車以外の自動車などは対象とはなりません。

対象経費には、購入費用、設定費用、社員研修費用、設置・撤去費用、リース契約・ライセンス契約等が含まれます。

まとめ

人材確保等支援助成金の雇用管理制度・雇用環境整備助成コースは、最大287.5万円の助成金を受けることできるため企業にとって大きな助けとなります。助成額を満額で受け取るには制度を複数導入し、要件を一つ一つクリアしていく必要がございます。要件に満たず申請をしてしまいますと助成金が受け取れなくなる可能性がございますので注意が必要です。

 

MSC社会保険労務士法人では、人材確保等支援助成金や各種助成金申請のお手伝いをしています。お困りの際は、お問い合わせページよりお気軽にご相談ください。

 

本内容は令和7年10月20日時点のものです。助成金内容は変更される可能性があるため、最新情報をご確認の上、申請を行ってください。

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