【2025年度(令和7年度)】キャリアアップ助成金 正社員化コースについて

キャリアアップ助成金の正社員化コースは、企業が非正規雇用の従業員を正社員に転換する際に、国から助成金を受け取ることができる制度です。
令和7年度(2025年度)の支給要領では、令和6年度に比べて助成額が半減するケースがあります。
この記事では、2025年度の変更点も含め、キャリアアップ助成金の正社員化コースについてわかりやすく説明します。

キャリアアップ助成金 正社員化コースとは

キャリアアップ助成金の正社員化コースは、有期雇用労働者やパートタイマーなど、正社員ではない従業員を一定期間雇用した後に正社員に転換することで、企業に支給される助成金です。この制度を活用することで、企業は人材の定着や雇用環境の向上を図ることができます。

助成金の金額は、大企業と中小企業で異なり、中小企業の方が多くの助成金を受けることができます。

大企業と中小企業の区分について

大企業か中小企業は、支給申請時点の資本金の額・出資の総額または常時雇用する労働者の数により判定されます。

支給額・加算額について

令和7年3月31日までの支給額

中小企業で、有期雇用労働者(契約社員や有期のパートタイマー)を正社員化した場合、80万円(40万円×2回)が支給されておりました。
また、多様な正社員制度(※)を新たに規定し、当該雇用区分 に転換等した場合には、40万円が加算されました。(ただし1事業所当たり1回のみ)
※多様な正社員制度とは…勤務地限定・職務限定・短時間正社員いずれか1つ以上を制度すること

加算額については後述します。


出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(パンフレット)」

令和7年4月1日からの支給額

中小企業であり重点支援対象者(※)である有期雇用労働者を正社員に転換した場合は、令和6年3月31日以前と同様の80万円(40万円×2回)が支給されます。
一方、重点支援対象者以外の場合は40万円と、令和7年3月31日に比べ半額になります。多様な正社員制度などを新たに規定する場合の加算額に関しては、引き続き支給されます。


出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)(パンフレット)」

※重点支援対象者とは(詳しくは後述します)
a:雇入れから3年以上の有期雇用労働者
b:雇入れから3年未満で、次の①②いずれにも該当する有期雇用労働者
①過去5年間に正規雇用労働者であった期間が1年以下
②過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない
c:派遣労働者、母子家庭の母等、父子家庭の父、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者
※ただし、雇用された期間が通算5年を超える有期雇用労働者については無期雇用労働者とみなします。

令和6年3月31日までの加算額


出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(パンフレット)」

令和7年4月1日からの加算額

令和6年度の加算額にあった、①~③の要件が廃止となりました。
加算額としてはなくなりましたが、重点支援対象者として扱われる形となりました。

出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)(パンフレット)」

重点支援対象者とは

a:雇入れから3年以上の有期雇用労働者について

(1)雇入れから3年以上5年未満の有期雇用労働者を正社員に転換した
→重点支援対象者として80万円(40万円×2期)が支給される

(2)雇入れから5年以上経過した有期雇用労働者を正社員に転換した
→重点支援対象者として40万円(20万円×2期)が支給される
※雇用された期間が通算5年を超える有期雇用労働者については無期雇用労働者とみなされます。
※支給額は中小企業を想定し計算しております。

b:雇入れから3年未満で、次の①②いずれにも該当する有期雇用労働者について

次の①②どちらも満たす必要があります。
①過去5年間に正規雇用労働者であった期間が合計1年以下
②過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない
起算日は従業員を雇入れた日であり、正社員転換した日ではないので注意が必要です。
申請にあたり、「1-5キャリアアップ助成金対象者確認票」を提出する必要があります。
また提出時にはキャリアアップ助成金の対象労働者の署名も必要となります。

出典:厚生労働省「様式第3号 別添様式1-5 対象者確認票」

c:派遣労働者、母子家庭の母等、父子家庭の父、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者について

(1)派遣労働者について

派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用する場合を指します。

(2)母子家庭の母等、父子家庭の父について

・母子家庭の母等とは
配偶者のない女子であって、20歳未満の子もしくは一定程度の障害がある子または精神もしくは身体の障害により長期にわたって労働の能力を失っている配偶者を扶養している者

・父子家庭の父とは
児童扶養手当を受けている者であって、次のイからホまでのいずれかに該当する児童の父が当該児童を監護し、かつ、これと生計を同じくする者
イ 父母が婚姻を解消した児童
ロ 母が死亡した児童
ハ 母が前号ハの政令で定める程度の障害の状態にある児童
ニ 母の生死が明らかでない児童
ホ その他イからニまでに準ずる状態にある児童で政令で定める者

(3)人材開発支援助成金の特定の訓練修了者について

対象となる訓練は以下の通りです。
イ 人材育成支援コース
ロ 事業展開等リスキリング支援コース
ハ 人への投資促進コース

各種コースについては下記の厚生労働省のホームページをご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html

支給要件(対象となる労働者)

(1)次のいずれかに該当する者であること。
イ 契約社員やパートタイマーなどで正規雇用労働者とは異なった雇用区分の適用を通算6カ月以上受けて雇用される者
ロ 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の有期実習型訓練を修了した有期雇用労働者であって、正規雇用労働者とは異なった雇用区分の適用を通算6カ月以上受けて雇用される者
※新規学卒者等は1年以上雇用されている者

(2)正社員雇用を訳して雇入れられた者ではないこと。

(3)支給対象事業主に正社員化する日の前日から過去3年以内に正社員として雇用されたことがない者であること。

(4)正社員化を行った適用事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者であること。

(5)支給申請日において、正社員化後の雇用区分の状態が継続し、離職していない者であること。また再び正社員以外の雇用区分に転換が予定されていないこと。

(6)正社員化した日から定年までの期間が1年以上であること。

(7)事業所内で一度も定年を迎えていないこと。

新規学卒者の取扱いについて

対象労働者が新規学卒者に該当する場合は、雇入れた日から起算して1年を経過してからではないと、支給対象外となります。
例えば、学校の卒業が令和7年3月であり、令和7年3月31日までに内定を得て、令和7年4月1日に雇用された新規学卒者は、令和8年3月31日まで正社員転換しても支給対象外となります。
また、有期実習型訓練を受講したとしても1年間は対象外となります。

正規雇用労働者の定義について

同一の事業所内の正規雇用労働者に適用される就業規則が適用されている労働者。 ただし、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が転換時点で適用されている者及びその内容がきちんと就業規則等に明記されていること。

<規程例>

出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)(パンフレット)」

支給要件(対象となる事業主)

(1)有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換する制度を就業規則等に規程していること。
また支給申請日において制度が継続して運用していること。
※制度がない場合は新たに規定することで可。

(2)社員転換日の前後6カ月以内に会社都合での退職者がいないこと。

(3)正社員化した従業員を雇用保険被保険者として適用させていること。

(4)正社員化後の賃金が正社員化前の賃金より3%以上増額していること。
※小数点以下は切捨てのため、増額が2.99%の場合は支給対象外となります。

(5)キャリアアップ計画書の計画期間内であること。

有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換する制度の整備について

(1)助成金申請にあたり、有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換することがあることを就業規則または労働協約その他これに準ずるものに規程しないといけません。
また新たに規程した場合には1事業所当たり1回のみですが、加算額として中小企業は20万円、大企業は15万円支給されます。

<規程例>

出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)(パンフレット)」

 

(2)就業規則の届出について

イ 常時雇用する労働者数が10人以上の場合
事業所を管轄する労働基準監督署へ提出義務があります。
そのため支給申請時には労働基準監督署の受理印のある、就業規則を添付する必要があります。

ロ 常時雇用する労働者が10人未満の場合
労働基準監督署への提出義務はありませんが、就業規則等が労働者に周知されている必要があります。
その周知されていることを証明するため「申立書」が必要となります。
支給申請時には就業規則等と申立書の提出が必要となります。

キャリアアップ計画書について

キャリアアップ計画書とは、正社員化を促進する上で計画を立てるものとなります。
計画書作成手順は下記の通りです。

① キャリアアップ管理者(※)を選定する
② キャリアアップ計画期間を設定する(3年以上5年以内)
③ 助成金申請するコースを選択し、計画対象者、目標、期間、目標を達成するために事業主が行う取り組みなどの記載する
④ 従業員から意見聴取する
⑤ キャリアアップ計画書を事業所管轄の労働局長へ提出する
 令和7年度よりキャリアアップ計画書の認定が廃止となり、届出のみで良くなりました。
キャリアアップ計画書の届出後に不備があった場合、届出日が効力の発生日となります。
※キャリアアップ管理者とは…その事業所に雇用されている方の中で、有期雇用労働者等のキャリアアップに取り組む者として必要な知識及び経験を有していると認められる者。事業主や役員もキャリアアップ管理者になることができます。ただし、労働者代表との兼任や複数事業所での兼任はできません。

申請の流れ

先ほどまでに述べた条件を全て満たして助成金の申請が可能となります。
以下が正社員化コースの助成金申請の流れとなります。

出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)(パンフレット)」

(1)正社員転換実施の前日までにキャリアアップ計画書を提出する
正社員転換の日がキャリアアップ計画書の計画期間内であることが必須

(2)有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換が可能なことを就業規則等に規程する

(3)入社から6ヶ月以降(新規学卒者は1年以降)に正規雇用労働者へ転換し、転換前6カ月の賃金が転換後6カ月の賃金より3%以上増額する

(4)正社員転換してから 6 ヶ月後に、1 回目のキャリアアップ申請書を提出する
※賃金支払日の翌日から2か月以内に申請が必要です。
(例)賃金支払日が10月15日の場合
賃金支払日の翌日が10月16日となり、12月15日までに申請が必要となります。

(5)審査が通ると助成金が支給される(1期目)

――――重点支援対象者以外の者はここまで。以下、重点支援対象者の場合――――

(6)正社員転換してから 12ヶ月後に、2回目のキャリアアップ申請書を提出する
※賃金支払日の翌日から2カ月以内に申請が必要です。

(7)審査が通ると助成金が支給される(2期目)

必要書類

(1)キャリアアップ助成金支給申請書(様式第3号)
キャリアアップ計画書の受理番号や企業情報を記入します。

(2)正社員化コース内訳(様式第3号・別添様式1-1)
支給申請対象労働者の氏名や年齢などの情報及び支給申請額を記入します。
支給申請額についてはフォーマットにて自動で計算してくれます。

(3)正社員化コース対象労働者詳細(様式第3号・別添様式1-2)
上述した「対象となる労働者」に相違がないかの確認書類です。
支給申請第1期用と第2期用があるので間違わないようにしてください。

(4)支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)
過去に不正受給がないかや暴力団との関係がないかの確認書類です。
問4~16に「いいえ」がある場合は助成金の受給ができません。

(5)支払方法・受取人住所届
振り込み口座情報を記入し、通帳の支払い口座がわかる写真等の添付も必要です。
※未登録または振込口座の変更がある場合のみ提が出必要です。

(6)管轄の労働局長の受理印があるキャリアアップ計画書の写し
正社員化の前日までに受理されていることが必要です。

(7)正社員化前後の就業規則または労働協約等の写し
従業員10名以上・・・労働基準監督署の受理印があるもの
従業員10名未満・・・労働基準監督署の受理印があるものまたは申立書

(8)対象労働者の正社員化前後の雇用契約書または労働条件通知書の写し
対象期間中に労働条件等変更し、雇用契約書または労働条件通知書がある場合は全て必要となります。

(9)対象労働者の正社員化前6ケ月、正社員化後6か月の賃金台帳等写し
正社員化後については勤務日数が11日以上ある月が6カ月間必要です。

(10)賃金台帳3%以上増額に係る計算書
下記フォーマット沿って正社員化前後の賃金を入力すれば自動で上昇率が計算されます。
https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fwww.mhlw.go.jp%2Fcontent%2F11909000%2F001242743.xlsm&wdOrigin=BROWSELINK

(11)対象労働者の正社員化前6か月、正社員化後6か月間の出勤簿 またはタイムカード等の写し。
正社員化後については勤務日数が11日以上ある月が6カ月間必要です。

まとめ

キャリアアップ助成金の正社員化コースは、企業にとって大きな助けとなりますが、申請には様々な要件を満たす必要があります。正社員転換に関する詳細な要件や書類準備を怠ると、助成金を受け取れなくなってしまいます。申請前にしっかりと準備を行い、従業員にも説明を行うことが重要です。

MSC社会保険労務士法人では、キャリアアップ助成金をはじめとする助成金申請のお手伝いをしています。お困りの際は、お問い合わせページよりお気軽にご相談ください。

※本内容は令和7年4月時点のものです。助成金内容は変更される可能性があるため、最新情報をご確認の上、申請を行ってください。

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